デジタル化の第一歩
製造業において、検査成績書や図面などの技術文書は、品質管理・製品追跡性・顧客対応の観点から極めて重要な役割を担っています。これらの書類は、製品の信頼性を裏付ける証拠であり、場合によっては数十年にわたり保管し続ける必要があります。しかし、紙での保管はスペース・劣化・検索性・災害リスクなど、さまざまな課題を孕んでいます。そうした背景から、書類のスキャン保存、いわゆる「電子化」は今や多くの製造業にとって避けては通れないテーマです。
今回は、製造業における検査書類・図面のスキャン保存法についていくつかご紹介します。
どの書類をスキャン対象とすべきか？
・検査成績書（寸法検査、外観検査、材料証明など）
・加工指示書・作業標準書
・図面類（部品図、組立図、工程図など）
・トレーサビリティ記録（製造ロット、使用材料、作業者記録）
・出荷証明書・納品書・品質保証書
特に品質マネジメントシステム認証を取得している企業では、これらの文書の長期保存が求められるため、電子化による一元管理は重要性が高まります。
法的観点と電子帳簿保存法
日本では「電子帳簿保存法」により、一定の要件を満たすことで紙文書を電子保存できるとされています。
以下の条件を満たす必要があります。
・タイムスタンプの付与（または改ざん防止措置）
・検索性の確保（日付・取引先などの検索項目）
・真実性、可視性の確保
税務署への事前申請が必要だった時代もありましたが、2022年の改正以降は手続きが簡素化されています。ただし、法令に従った管理体制を構築することは依然として求められます。
DMS（文書管理システム）の導入という選択肢
まとめ：スキャン保存は「コスト削減」だけではない
製造業の現場でスキャン保存を導入する際、単なる「紙の削減」「保管コストの削減」として捉えるのではなく、以下のような視点が重要です。
・品質保証体制の強化
・災害・リスク管理の高度化
・情報共有と属人化排除
・働き方改革への寄与
デジタル化はあくまで手段であり、目的は「企業としての対応力を高めること」です。スキャン保存をきっかけに、業務プロセスの見直しや全社的なDX（デジタルトランスフォーメーション）へと繋げていくことが、これからの製造業に求められる姿勢といえる。
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