余白処理の基本
実務の現場では、余白処理は避けて通れません。大量の資料をスキャンする際、余白をそのまま残せば、データサイズは増え、表示効率も下がります。検索性や可読性を重視する業務用途では、余白はノイズとして扱われることも少なくありません。
そのため、自動トリミング機能を使い、本文領域だけを抽出する処理が一般的に行われます。傾き補正や中央揃えも、余白を均一化するための重要な工程です。
この段階での余白は、あくまで「調整対象」であり、最終成果物の品質を安定させるためのコントロール変数と言えるでしょう。
効率を求めるスキャニングにおいて、余白処理は理にかなった判断なのです。
今回は、スキャニングと余白の処理についていくつかご紹介します。
切りすぎた余白が失うもの
一方で、余白を過度に削ぎ落としたスキャンデータには、どこか窮屈な印象が残ります。文字は確かに読みやすくなっているのに、原本が持っていたはずの「間」や「呼吸」が感じられなくなるのです。
余白は、文字と文字の関係性を整理し、読み手の視線を導く役割を担っています。行間や段落だけでなく、ページの周囲にある空白もまた、情報構造の一部です。それを完全に排除してしまうと、文脈が平面的になり、内容が単なる文字列へと還元されてしまいます。
スキャニングによって情報を保存することと、体験を保存することは、必ずしも同義ではありません。余白を切るという行為は、その差を浮き彫りにします。
不揃いな余白が語るもの
手書きの資料や古い印刷物をスキャンすると、左右上下の余白が均一でないことに気づきます。製本のズレ、裁断の誤差、書き込みのために残された空間。こうした不揃いさは、デジタルでは「補正すべき欠陥」として扱われがちです。
しかし、その不均一な余白こそが、資料の成り立ちや使われ方を物語っています。誰かが後から書き足したメモ、折り目の跡、指で触れられ続けた角。余白は、情報が書かれなかった場所であると同時に、時間が刻まれた場所でもあります。
スキャン時に余白を整えすぎると、そうした痕跡は静かに消えていきます。
余白を残すという選択
保存や研究を目的としたスキャニングでは、余白は積極的に残されます。ページ全体を一枚の「物」として記録するため、本文領域だけでなく、紙の縁や影、場合によっては背景まで含めて取り込むこともあります。
このとき余白は、サイズ情報や製本構造、使用状態を示す重要な手がかりになります。後から見返したとき、その資料がどのような姿で存在していたのかを想像できるかどうかは、余白の扱いに大きく左右されます。
アーカイブにおいて、余白は削減対象ではなく、記録対象なのです。
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