古地図をスキャンしてGISへ活用する:詳細なプロセスと技術的背景

はじめに

古地図は、過去の地理情報や土地利用、都市の発展、自然環境の変遷を理解する上で貴重な資料です。歴史研究、都市計画、環境保全、防災、観光開発など、様々な分野での応用が期待されています。近年、これらの古地図をデジタル化し、地理情報システム(GIS: Geographic Information System)上で活用する取り組みが加速しています。

今回は、古地図をスキャンし、GISへ取り込む一連の工程について、技術的・実務的観点から詳述します。

古地図の収集と選定

まず最初に、活用したい古地図を収集・選定する必要があります。出典は図書館、文書館、博物館、大学研究室、国土地理院など多岐にわたり、対象地域や時代背景、縮尺、図の精度、保存状態を考慮して選定されます。ここで重要なのは、後述するジオリファレンス(地理座標との整合)を考慮し、できるだけ地理的特徴が明確に描かれているものを選ぶことです。

ジオリファレンス(空間参照)

「目標点(コントロールポイント)の選定」

目印となる川の合流点、寺社仏閣、古道、山頂など、現代でも位置が変わらない「ランドマーク」を選び、古地図と現代地図の両方で同じ点を複数指定します。

「変換方式の選定」

GISソフトでは、指定した対応点に基づいて変換を行います。以下のような幾何学的変換方式が用いられます。

アフィン変換(傾き・拡大縮小)、多項式変換(歪み補正に強い)、TPS(Thin Plate Spline)変換(柔軟な曲面変形)

「精度確認」

変換後は、残差(RMSエラー)を確認し、必要であれば対応点の修正を繰り返します。理想的には残差がピクセル単位で1以下に収まるのが望ましいです。

GIS上でのデータ化と属性付与

ジオリファレンスを経た古地図は、既に空間的整合性を持った「ラスタデータ」としてGIS上に重ね合わせ可能になりますが、さらに分析の幅を広げるためには、地物(道、建物、土地利用など)を「ベクターデータ」に変換し、属性情報を付与する作業が求められます。

「トレース作業(デジタイズ)」

古地図上の河川、道路、建物、行政界などを、手動または半自動でポリゴン/ライン/ポイントデータとしてトレースします。この作業にはQGISやArcGISのデジタイジングツールを用います。

「属性情報の付与」

トレースされた地物には、地名、用途、時代背景、寸法などの属性を付けていきます。古地図上の文字情報をOCR(光学文字認識)で読み取ることで、効率的にデータ入力を行うことも可能ですが、旧字体や手書き文字の場合は精度が低いため、人手による確認が不可欠です。

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