紙の保存方法が日本と海外で全然違う理由とは

紙の保存方法が変わる要因

紙の保存方法が日本と海外で異なる理由には、気候、文化、歴史、使用目的、保存技術の発展度合いなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。

今回は、日本と海外で紙の保存方法が変わる要因についていくつかご紹介します。

気候の違いと保存環境への影響

日本と多くの欧米諸国とでは、気候条件が大きく異なります。日本は高温多湿な気候が特徴で、梅雨や台風シーズンがあり、年間を通じて湿度が高くなる傾向があります。紙は湿気を吸いやすく、カビの発生や変色、虫食いなどが起こりやすくなります。そのため、日本では昔から湿気対策を重視した保存方法が発達してきました。

たとえば、和紙の保存には「桐の箱」や「防湿庫」などが使われ、除湿剤や乾燥剤を併用することもあり、和紙自体が通気性に優れているため、ある程度の湿度変化には耐性があります。

一方、欧米の多くの地域、特に北米やヨーロッパの内陸部は乾燥した気候であるため、湿気による劣化よりも乾燥や紫外線による紙の脆化の方が問題視される傾向があります。そのため、紙が乾燥して脆くならないように一定の湿度を保つ空調管理が重視されます。加えて、紫外線カットのフィルターを窓に設けたり、紙資料を光の当たらない場所に保存したりする方法も一般的です。

紙の材質と製法の違い

日本と海外では紙自体の作り方にも違いがあります。日本の和紙は、主に楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの植物繊維から作られ、長い繊維と伝統的な手漉き製法によって非常に丈夫で、保存性に優れています。このため、奈良時代から平安時代にかけての文書や絵巻物が現代まで良好な状態で残っている例も多く見られます。

一方、西洋の紙は、古くは木綿(コットン)や亜麻(リネン)などの布から作られましたが、近代以降は木材パルプが主原料になっています。このため、酸性紙の問題が発生しやすく、時間と共に紙が黄変・脆化する傾向があります。これを防ぐために、欧米では脱酸処理や中性紙への移行が進められており、保存には酸性度を中和する技術やアルカリ性の収納材が使われます。

技術とインフラの差異

近代以降、紙の保存技術は大きく発展しましたが、その導入のされ方にも違いがあります。欧米では大学・博物館・図書館などの大規模施設における保存専門職(コンセベーター)の制度があり、科学的根拠に基づいた方法で紙の保存・修復が行われます。

日本でも近年では同様の動きが見られるものの、伝統的には職人的な知識と技術が中心であり、「紙漉き職人」や「修復職人」などの熟練者に依存する傾向が強く残っています。これにより、保存方法も標準化されたものではなく、個別の経験や判断によって異なる場合が多いのです。

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